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インクジェット方式

インクジェット方式とは

 

インクジェット方式とは、インクを微粒子化し、被印字媒体に対し加圧や加熱などにより微細孔から射出させる印刷方式のことを言います。直接インクを吐出する方式であるため、他の方式の印刷機のように印刷媒体が平坦でなくとも印刷が可能です。また、オフセット印刷のように版下を作製する必要がなく、レーザー・プリンタなどのように加熱定着処理も不要であるため、機構が大変単純であり、近年は、一般家庭向けカラープリンタの主流となっています。

 

歴史的には、ケルヴィンが1867年にインク滴に対する荷電実験を行ったことがインクジェット・プリンタの起源とされていますが、本格的な研究の取り組みは1950年代からで、西ドイツのシーメンスがコンティニュアス型のプリンタを開発、1960年代より実用的なオンデマンド型のピエゾ方式、1970年代にはサーマル方式も考案され、ヒューレット・パッカードやキヤノンなどが商品化しています。

 

近年のインクジェット・プリンタの低価格化、高性能化が進み、特に噴射孔の極微細化は著しいものがあります。その結果、誰でも簡単に高精細な印刷結果が得られるようなり、デジタルカメラで撮影した家族の写真を印刷する場合でも、通常のフィルムカメラの現像にも迫るほどです。

 

また、他の方式と比べて、多色化が容易で、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの基本色を混ぜ合わせることで、フルカラー印刷が可能になっています。さらに、フォトシアン、フォトマゼンタ、レッド、グリーン、グレー、マットブラックなどを加えることで、最大10色構成などの多色印刷を行う製品も登場してきています。

 

 

【インクジェット・プリンタの方式】

 

インクジェット・プリンタには、二つの方式があります。ひとつはコンティニュアス型で、もうひとつはオンデマンド型です。現在小型プリンタ用として主流となっているのはオンデマンド型です。さらにオンデマンド型には、ピエゾ方式サーマル方式2つがあります。

 

 

【コンティニュアス型】

 

コンティニュアス方式とは最も歴史が長いインクジェットテクノロジーで、連続吐出方式とも言われます。ポンプによってノズルから連続的に押し出された溶剤系のインク滴に、電極によって電荷を加え、印字の必要に応じて電子的に偏向させながら紙面に印刷します。偏向電極で曲げられなかったインクは回収され、再利用されます。

 

ポンプによる高い圧力でインクを押し出すので高粘度のインクでも使用でき、また連続的にインクを押し出すことから速乾性のインクも使用できるなどインクの選択幅が広いのも特徴です。

 

ただ、画像の解像度をコントロールするのが苦手で、複雑なインク循環システムを維持する必要があります。高速印刷は可能なのですが、構造上小型化が難しく、マルチヘッド化も困難であるなどから、家庭用のプリンタとしては使用されておらず、主に工業用のマーカーとして利用されています。

 

 

【オンデマンド型】

 

オンデマンドという言葉のとおり、印字時に必要なときに必要な量のインク滴を吐出する方式のことを言います。インキ滴の生成速度が毎秒10滴程度であるなどの欠点があり、高速印刷には向いていませんが、構造が簡単で小型化やマルチヘッド化がしやすいなどの長所があるため、家庭用のインクジェットプリンターに多く使われます。

 

また、このオンデマンド型はインク滴に圧力を加える方法により、ピエゾ方式、サーマル方式などに分けることができます。

 

 

【ピエゾ方式】

 

ピエゾ方式とは、電圧を加えると変形するピエゾ素子(圧電素子)を用いた方式のことを言います。ピエゾ素子をインクの詰まった微細管に取り付け、外部エアーの圧力により、このピエゾ素子に電圧を加えて変形させることでインクをノズルへ供給します。ピエゾの変形量そのものを電圧制御するため、インク噴出量や液滴サイズを精密に制御という特徴があります。

 

また、インクを加熱しないため、使用環境の気圧や気温に左右されないため幅広いインクに対応可能です。またヘッドの耐久性も高く、低消費電力というメリットもあります。ただし、インク内に気泡が混じると目詰まりが生じやすかったり、ヘッド構造が複雑であったりという、ピエゾ素子を小型化するとインクを押し出すために必要な体積変化が得られにくいなどのデメリットもあります。

 

ピエゾ方式は家庭用のプリンタだけではなく、サイン、ディスプレイ等の屋外用途など幅広い産業用途で使用されていますが、現在,主要な家庭用インクジェット・プリンタとしてピエゾ方式を採用しているのはセイコーエプソンだけであります。

 

 

【サーマル方式】

 

サーマル方式とは、加熱により管内のインクに気泡を発生させ、気泡がはじける力によりインクを噴射する方式です。加熱に使用するヒーターには抵抗加熱や誘導加熱などが使われます。サーマル方式では、ヘッド構造が比較的単純で、物理的機構が少なく印刷速度の高速化や印字画素の高密度化が図りやすいという特徴があります。しかし、熱をインクに加えることになるため、熱劣化の少ないインクを用いる必要があり、使用できるインクが限定されてしまいます。また、ヘッドの寿命も短いと言われています。さらに、同一の噴出穴でインク噴出量を調整するのが難しいと言われ、そのために、プリンタに高速印字用の大液滴噴出穴と、写真印刷などに用いる小液滴噴出穴を並べて作られているものもあります。

 

 

2003年ころから、ピエゾ方式とサーマル方式とで進化の軸が分かれ始めました。それぞれの特徴を生かし,ピエゾ方式は顔料インクを使って印刷物の耐久性を高めるという方法を推し進め、一方のサーマル方式は,より印刷速度を上げる方向性を打ち出しています。

 

 

【インク】

 

インクジェット・プリンタでの印刷に使用されるインクは、オンデマンド型プリンタではほぼすべて水溶性のインクが使用されています。色の表現は、基本的には、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)を混ぜて他の色を表現する減色法が使われ、これにブラック(Bk)インク加えて、4色のインクで表現します。また、インクには、主に「染料系」と「顔料系」の2系統に分けられます。

 

染料系インク

 

染料系のインクは被印字媒体に対して色素を染み込ませて色をつけます。染料系のインクは非常に色再現性が高く、光沢が出やすいという特徴があります。その一方で、耐水性や耐光性がが低く、水に濡らすと、にじみが生じやすかったり、太陽光などが長時間当たると、色あせを起こしやすいというデメリットがあります。染料系のインクは初期のインクジェット・プリンタに採用され、現在でも広く普及しています。

 

顔料系インク

 

顔料系のインクは、インクの色素が被印字媒体表面に固着して色をつけます。そのために、耐水性が高く、耐光性も高いという、染料系のインクのデメリットがありません。しかし、耐摩擦性が低かったり、溶液としての安定性が悪いというデメリットがあります。そのために、印刷面をこすると色落ちが生じたりすることがあります。また、光沢が出にくく、比較的ノズルの目詰まりを起こしやすいというデメリットもあります。

 

 

【用紙】

 

染料系インクを使用したインクジェット・プリンタを普通紙に使用した場合、どうしてもにじみが発生してしまったり、インクが裏側まで染み抜けてしまったりすることがあります。簡単な印刷物の場合は、それでもかまわないかもしれませんが、インクジェットプリンタメーカーなどでは高品質な印刷結果を得るために専用紙と呼ばれるものを開発しています。

 

専用紙としては、普通紙の表面にインクを吸収し固着させることで、にじみの発生を抑えるコート紙や、基本的にはコート紙と同じ構造ですが、白紙部や画像印字部に光沢があり、写真印刷等に用いられる光沢紙などがあります。

 

 

【インクジェット方式のメリット】

 

 

① 多彩な色の再現性。

 

高品質なフォト印刷が行えるほど、多彩な色再現性を実現しています。最大10色構成などの多色印刷機が登場などは、その最たるもので、専用の写真紙を使えば、鮮やかなフォト印刷が可能になります。

 

② 本体価格やランニングコストが、レーザー式より安価。

 

本体価格でいえば、1万円を切るものも珍しくありません。ランニングコストもレザープリンタより安く抑えることができ、低消費電力が魅力です。

 

③ 軽量でコンパクト。

 

機構があまり複雑ではないので、多機能な複合機であっても軽量でコンパクトで済みます。

 

 

【デメリット】

 

 

① 印刷速度が遅い。

 

総じてインクジェット式は、レーザー式に比べると、印刷速度が遅いことが多いです。特にカラー印刷を行う場合、それが顕著に現れます。

 

 

② 印刷可能な枚数が少ない機種が多い。

 

レーザー式に比べて、印刷可能な枚数が少なく、早くインクがなくなってしまいます。

 

 

③ 印刷用紙が水分を吸ってしまう。

 

水分を持つインクを使って印刷するため、どうしても普通紙を使うと、紙がインクの水分を吸い、それが乾燥する時間差によって用紙が波打ってしまったり、色がにじんだりすることがあります。もちろん、これはインクジェット専用紙を使えば解消できますが、コスト的に負担が余計にかかります。

 

④ 給紙可能な用紙の枚数少ない。

 

ビジネスで利用するのに、A4用紙の100枚や150枚程度の給紙しかできないので、あっという間に用紙切れになってしまいます。

 

 

【どの様な印刷物に適しているか】

 

・家庭用プリンタとして、写真印刷からラベルや手紙の作成まで、幅広い印刷が可能です。

・産業用プリンタとして、食料品の日付や賞味期限の表示に。また、様々な部品への印字など。

・企業用プリンタとして、様々な企画書、資料作成などに。