オンデマンド印刷
【オンデマンド印刷とは】
オンデマンド(On Demand)という言葉には、「要求があり次第に、要求に応じて」という意味がありますが、従来の紙にインキを転写するのにかなりの時間を要したオフセット印刷に比べて、「必要な時に、必要なものを、必要な数だけ」印刷するのがオンデマンド印刷と言います。
オンデマンド印刷は、印刷技法を指す言葉ではなく、印刷のあり方をしめす言葉ですので、オフセット印刷であってもごく短納期、少部数を印刷するのであればオンデマンド印刷といえます。しかし現実的には、一般のプリンタを巨大化させたようなデジタル印刷機による印刷を指す場合がほとんどです。
デジタル印刷に関しては、米国ゼロックス社が開発したDocuTechがその市場を開発しました。その後、コニカミノルタ、リコー、キヤノンも相次いで新製品を投入し、複写機に次ぐ大きな市場として注目されています。
さて、オンデマンド印刷の魅力は、なんといっても低コストで、短時間に印刷ができるということでしょう。これまでのオフセットの印刷の場合、どうしても大部数刷らなければ、印刷コストが抑えられませんでした。もちろん、一度に大量の部数を刷る必要のある場合には良いのですが、小部数印刷の場合にはコスト増となる問題がありました。
たとえば、冊子やパンフレット、チラシなどのを印刷する場合、まず印刷の「版」を作らなければなりません。それから、「版」を印刷機にセットして大量部数を印刷します。この方法だと最低ロットが1,000部くらい必要で、50部や100部といった少ない部数での印刷では、多くの無駄が生じてしまうのです。その分、コストとして跳ね返ってきますから、少部数印刷には不向きだったわけです。
しかし、オンデマンド印刷は、デジタルデータを直接出力するデジタル印刷機を使用し、デザインから印刷までをフルデジタルで行うことで、フィルム製版のような「版」が不要となり、オフセット印刷に必要な工程を短縮することができるようになったのです。その結果、コストと納期の短縮を可能とし、同時に10部、50部といった少量部数での印刷も可能となったのです。欲しい時に欲しい部数を小ロットで対応できるオンデマンド印刷は、これからの主流になりつつあります。
興味深いお話として、出版業界がこのオンデマンド印刷にいち早く注目したということがあります。本来、大量印刷するはずの本ですから、オンデマンド印刷とは縁遠いのではと思われるかもしれませんが、昨今の活字離れから、本がなかなか売れないようです。一部ベストセラーはあるにしても、多くは、在庫を大量にかかえてしまい、1000 部を売るのも難しいのが現実のようです。
そんな状況化で登場したオンデマンド印刷に、彼らが飛びつくのも無理もありません。いきおい少部数出版にならざるを得ないが,今までのオフセットを中心とした技法だと,一冊単価が高くなりすぎる.なんとか少部数で採算のとれる方法がないかと模索を続けてきた出版業者にとって、小部数を低価格で実現したオンデマンド印刷という方法は、大変魅力なものでした。実際にオンデマンド出版が世に登場しはじめるのは、1999 年頃からだと言われています。
また、最近ではオンデマンド印刷でないと存在し得なかっただろうと思われる領域の本も作られつつあります。たとえば、弱視の人たちに向けた大活字本です。視覚障害者でも、低いながらも視力がある場合、点字ではなくとも良いわけです。残された視力でも読めるように、字が大きくて、横線の太いゴシック体で印刷されていれば読むことができるわけです。それが大活字本なわけです。
しかし、これまでは制作上の制約が大きすぎたために、大活字本を作るのは簡単なことではありませんでした。それが、このコンピュータとオンデマンド印刷システムを得て、初めて現実的なものとなったと言われています。今まで本の世界から疎外されてきた弱視者の方々も、本の世界にふれることができるオンデマンド印刷は、まさに新しい領域に踏み込んむだといえるでしょう。それは、もしかしたら今まで大量生産大量消費社会の中で発達してきた印刷システムを根本的に変革するものかもしれません。
【メリット】
① 納期短縮
オンライン入稿からダイレクトに出力できるので、オフセット印刷方式で必要だった工程が簡略化でき、これまでとは比較にならないほど納期を短縮できます。また、インキと違い、乾燥時間が必要無いため、印刷の後の加工・梱包がすぐできます。
② コストダウン
金属板に文字や画像を焼き付ける製版工程が必要ないということは、納期短縮のメリットだけではなく、コストダウンにも大きく貢献しています。これまで小部数でも数十万の料金がかかっていた従来の印刷に比べ、オンデマンド印刷では、小部数で比較すると、ほぼ10分の1に近い低価格を実現しています。
③ 変更が容易
データから直接印刷するので、もし訂正や改訂があった場合も、迅速に対応することができます。
④ 不要在庫ゼロ
小部数印刷に対応していますので、無駄な在庫を作りません。
⑤ 環境保全
工程の簡略化、不要在庫ゼロにより廃棄物を削減し、エコの観点からも大変優れています。
⑥ 少量多品種・可変印刷
製版の省略により少量他品種の印刷も可能です。1枚ごと内容が違っても追加料金がほとんどかからず、ナンバリングなどのバリアブル(可変)印刷にも対応することが可能です。
⑦ 写真のくすみが無い
写真をCMYK分解する必要が特に無いため、RGBのまま印刷することが可能。CMYK特有のくすみがほとんどありません。
*CMYKとは、色の表現方式で用いられる、シアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色の組み合わせのこと。RGBとは、ディスプレイ画面で色を表現するために用いられる、赤、緑、青の3色のことである。これらの組み合わせによってあらゆる色を表現することができる。
⑧ 和紙や上質紙にもきれいに印刷できる
和紙や上質紙にオフセット印刷した場合、色が沈んだり、極端に色が変わったりしますが、オンデマンド印刷では、色の変化があまり起きません。
【デメリット】
① 大量の複製には適さない
小部数印刷ではコストダウンのメリットがありますが、逆に100 ~200部以上になるとコスト的なメリットはなくなってき、オフセット印刷の方が安くなります。したがって、大量の複製には適さないといえます。
② 印刷のクオリティがオフセットに比べて低い
オンデマンド印刷は「トナー方式」で、オフセット印刷とは印刷方式が異なります。一般に解像度は、オフセット印刷の方が高く、写真集など、特に美しい写真を使用する場合、オフセット印刷ほどのクオリティは望めません。面積の大きいベタや平網は少々ムラになりやすくなります。特に顕著に出るのが、「網(アミ)」です。グレーのアミなどは、近くで見ると、オフセット印刷よりもザラつきがでてしまいます。
また、同じデータから印刷しても色、濃さなど同一に仕上がらなかったり、一枚ごとの印刷位置が微妙にズレでしまうこともあります。したがって、仕上がりラインギリギリのレイアウトなどの精密なデザインには向かないかもしれません。
しかし、それでもオフセット印刷と比べればまだ品質は低いですが、オンデマンド印刷機は、ここ数年で劇的な進化を遂げてきています。従来のオフセット印刷と比べても遜色のないレベルといっていいほど、品質も向上しています。
③ 凸凹、毛羽立っている紙に印刷するのが苦手
近年印刷技術が進化し、コート紙・マット紙・キャスト紙・和紙など大体の紙に印刷できるようになりました。また、かなり厚い紙にも印刷できます。ただ、毛羽立った和紙や凹凸が大きな特殊紙などの印刷は苦手です。
④ 印刷にずれが生じる
印字位置や表裏見当性に関して、オフセット印刷と比べると、どうしてもズレは大きくなります。また、そのために、後加工を行った際に仕上がりに誤差が生じてしまいます。ただし、印刷機の性能向上によって、その誤差は以前に比べて格段に小さくなり、上位機種では、±0.5mm以下までその誤差を縮めています。
【どの様な印刷物に適しているか】
① 低コストで必要な分だけ印刷したいとき
② 印刷物の余計な在庫を持ちたくないとき
③ 急に印刷が必要になったとき
④ 量を必要としないとき
⑤ それほど高品質な印刷を望まないとき
具体例
・社内報
・ちらし、DM
・カタログ、パンフレット
・POPメニュー
・可変印刷(宛名印刷など)
・稀少本や復刻本の再版の出版本
・在庫を持たずに注文に応える出版本
・報告書・企画書
・世界で一冊しかない自分史など
・部数限定で記念に配る限定本
・俳句会や山岳会など同好の志が作る同人誌
・年一度書き換え必須の住所録